天才のひらめきと逸脱−−新しい学問の発見をもたらす 天才のひらめき は、ときと して「たわいなさ」として現れる。デリダはそこに記号の必然的なずれや逸脱を認め、 コンディヤックの記号(言語)論を通じて、自らの思想を展開 させていく。(帯文より) 本書は Jacques Derrida, L'Archeologie du frivole, Galilee, 1990 (初版1973) の全訳である。 1 二次的な第一 のもの――メタフィジーク 2 天才の事後修正 3 想像――概念の代役、力の話 4 傍注または着目――浮遊する二頁 5 『人間知識起源論』への序論――たわいなさそれ自体 訳注/訳者あとがき 初期代表作『グラマトロジーについて』の第二部でルソーの読解に取り組んだのにつづき、 デリダは再び18世紀フランスの思想家に取り組んでいる。『人間知識起源論』を中心に、 感覚論哲学の雄コンディヤックを論じる本書は、デリダによる独創的なコンディヤック読解 の書であり、コンディヤック思想の脱構築の書である。『グラマトロジー』とともにデリダ 初期を画す「双子の書物」のひとつ。 (「BOOK」データベースより) 「人びとは、天才作家たちと同じような評判を得ることができると信じ込んでしまい、そうな るとたわいない言いまわしが幅をきかせるようになる。」 十八世紀フランスの感覚論哲学者コンディヤックの言語論は、こうした新鮮な発想の記述 に満ちている。デリダは、それに対する 鋭利な分析を通して自己の思想を展開させる。 謎解きのスリルも備わっている。コンディヤックは、主著を「書き上げた」時になって言う。 「私はまだ観念の原理の全貌を認識してはいなかった。二頁ほどの部分が、あるべき位置 になかったからである。」 この二頁とは? 謎を探るデリダの議論は、フロイトの精神分析と関係してゆく。 デリダやいわゆる脱構築に関心のある人はもちろん、広く思想、文学、言語などに興味を もつ人に勧めたい。 (東京新聞・中日新聞 2006年8月3日夕刊 「翻訳ほりだし物」欄、訳者による著作紹介) 「デリダのコンディヤック論−−『たわいなさの考古学』解題」(訳者による解題)(名古屋 大学大学院国際言語文化研究科『言語文化論集』第 XXVIII巻第1号,2006年10月) 『日本18世紀学会年報』第23号, 2008年6月, p.53-54 に、本書についての吉澤 保氏に よる書評が掲載されています。 1930年-2004年。現代の代表的哲学者。フランス国籍。アルジェリア出身。本書と関係が 深い主要著作 : La Voix et le phenomene : introduction au probleme du signe dans la phenomenologie de Husserl (1967) [『声と現象』 理想社 1970、筑摩書房 2005]、De la Grammatologie (1967) [『グラマトロジーについて』 現代思潮社 1972]、Limited Inc. (1990) [『有限責任会社』 法政大学出版局 2002] 1715年-1780年。フランス18世紀の感覚論哲学者。主要著作 : Essai sur l'origine des connaissances humaines (1746) [『人間知識起源論』 (邦訳は『人間認識起源論』 岩波 文庫 1994)]、Traite des sensations (1754) [『感覚論』 (邦訳は『感覺論』 創元社 1948] |