『世界形成論』も内容的に近縁関係にある『蘇ったジョル ダーノ・ブルー ノ Jordanus Brunus redivivus 』や『生死一如 Parite de la vie et de la mort 』(『啓蒙の地下文書 I 』収 録)も手写本自体はそれぞれ一部ずつ確認されているだけだが、後の二つの文書はとも に一七七一年頃『哲学作品集 Pieces philosophiques 』に収められて刊行された。しかるに 『世界形成論』は刊行には至らなかった。刊行される以前のこれらの文書の影響力は、 確認された写本の数からしてそれほ ど大きいものではなかったと思われる。 (・・・) とはい え、『蘇ったジョルダーノ・ブルーノ』、『生死一如』については、刊行後の一七七〇年代に はそれなりに読者を得たと思われる。『世界形成論』の場合 はそうしたこともなかったか ら、一八世紀を通じてその影響はきわめて限定されたものであったと考えざるを得ない。 (・・・)この作品は多くの論者によって言及されるが、それはもっぱら作品の内容の価値 によるものと言える。 『世界形成論』が一八世紀にはさほど読まれたとは思われないにもかかわらず、地下文書 についてのこれまでの著名な研究はどれも積極的にこの作品に言及 してきた。それは つまるところ、この作品がラジカルな唯物論、無神論、生物変移説を 内容としているから であるに違いない。 完太郎氏による書評が掲載されました。 |